伝統をたずねて

江戸鼈甲

小山 織氏
小山 織(こやま おり)
インテリア スタイリスト

早稲田大学文学部卒業。雑誌編集部勤務の後、フリーランスのインテリアスタイリストとして、雑誌、広告のインテリアテーマのスタイリングや執筆を手がける。日本の伝統的な生活文化に造詣が深く、機能的で美しい伝統の逸品を現代の暮らしに生かす提案を続けている。著書に「和の雑貨」「引出物」「小山織の和の雑貨とインテリア」(以上マガジンハウス)「職人気質をひとつ」(NHK出版)。近著に「INSPIRED SHAPES」(講談社インターナショナル)などがある。

浮世絵の花魁(おいらん)の髪を飾る飴色や斑入(ふい)りの鼈甲の櫛、笄(こうがい)、簪(かんざし)の大胆な美しさ、目を奪われます。江戸の鼈甲工芸の起源は、残された文書「玳瑁亀図説(たいまいがめずせつ)」により江戸時代中頃と知られます。材料の鼈甲は南洋に棲息するウミガメの一種のタイマイ。海外との交易で得た材料と技術で制作が進んでいた長崎から江戸へ伝えられました。長崎の鼈甲工芸は室内装飾品の制作で発展。一方、江戸鼈甲は髪飾りや大名の婚礼仕度の和装品などに発展。薄い甲殻を何枚か重ね、水や熱、圧力を加えて張り合わせて厚みを増し、切る、削るなどして整形し磨いて仕上げます。

東京江東区の亀戸天神 鳥居前にあるベッ甲イソガイは、江戸の鼈甲工房の流れを汲む初代が昭和初期に創始。現在、三代目磯貝 剛さんと父 二代目、兄弟と一族がそれぞれ個性豊かに制作。

平成四年のワシントン条約の決定で鼈甲材料の輸入が絶たれた時期、二代目が廃業した工房の在庫材料を売り立てや組合を通じて入手し工房継続の目途をつけました。教職に就くつもりで学んでいた磯貝さんは幼少から好きだった鼈甲工芸の道に進路を変更。大学在学中から父に師事し、卒業後専心して現在二十二年のキャリア。

「張り合わせの圧着の温度、圧力、時間の加減には熟練を要し、制作工程で最も難しい。江戸に花開いた鼈甲の工芸美と技術を絶やさず、現代人に親しんでもらえるアイテムを提案していきたい」と磯貝さん。

長年、国や東京都が注力してきたタイマイの国内での養殖研究を、野生種の保護と鼈甲工芸の存続を願う制作者の各団体などが引き継いでいます。

「沖縄で養殖された材料が近々届く予定なんです」

磯貝さんの声は弾んでいます。

べっ甲ブローチ 鳥獣戯画 - 相撲ウサギ、相撲カエル(左)べっ甲かんざし 鳥獣戯画 - あっぱれウサギ(右)

■べっ甲ブローチ 鳥獣戯画 - 相撲ウサギ、相撲カエル(左)
しなやかで艶やかな素材感を持つべっ甲と丁寧な作りがあいまって、いきいきと今にも動きそうな動物たちを表現しています。同シリーズで帯留も制作。
ウサギ 約縦4×横4×厚み1cm ¥33,000
カエル 約縦5×横4×厚み1cm ¥38,000

■べっ甲かんざし 鳥獣戯画 - あっぱれウサギ(右)
京都 高山寺に伝わる国宝「鳥獣戯画」の遊び心や豊かな想像力に感動、触発されてモチーフにすることを思い立ち、描かれている動物たちをシリーズで制作。
長さ約15cm ¥58,000

べっ甲製ZIPPOライター

■べっ甲製ZIPPOライター
手触りが温かく快い。ZIPPO社のライセンスを得て制作。同じ色合いはひとつとしてないので、まさに世界にたった一つの逸品を持つことになります。
約幅4×奥行1.6×高さ6cm ¥80,000

耳かき レギュラー

■耳かき レギュラー
化学製品と違ってべっ甲はほのかに温かく、耳へのあたりが柔らかい。柄は持ちやすさを考えたオリジナルな形。端材ではなく上質な部分を選んで制作。  布製ケース付き 長さ約9.5cm ¥3,800

べっ甲の“洗える”クリームスプーン

■べっ甲の“洗える”クリームスプーン
軽く水洗いしても艶が失われないよう柄のべっ甲にコーティングをしています。本体はステンレス。ティースプーン、ケーキフォーク、ヒメフォークも制作。
長さ約14cm ¥16,000

シュガーポット

■シュガーポット
完全防水ではありませんが、べっ甲の蓋とスプーンにはさっと洗える加工を施しています。美しく高級感があるので記念品やお祝いの贈り物にふさわしい。
シュガーポット ふた 約直径6×高さ3cm ガラス入れ物 約口径5×高さ5.5cm スプーン 長さ約10cm
ポット&スプーンセット ¥30,000

お問い合わせは ベッ甲イソガイ 亀戸店
電話 03-5628-1244
※価格はすべて税別価格です。
http://www.bekko-isogai.jp/
2020 vol.36