健康アドバイス
更年期のことを知りましょう
更年期とは、女性ならだれもが迎える閉経を挟んだ前後5年くらいのことをいいます。個人差はありますが、日本人の場合、だいたい45歳から55歳の間を指すことが多いようです。女性のからだは妊娠と出産を成立させるために思春期になると女性ホルモンの分泌が急激に増加しますが、更年期に入ると視床下部、下垂体、卵巣、その他の内分泌に関係のある臓器の老化現象によりホルモンの不調和が起こります。このホルモン分泌のアンバランスが、のぼせやほてり、動悸(どうき)などの更年期障害と呼ばれるさまざまな症状を引き起こす原因になるのです。さらに、このような生理的変化と同時に、子どもの独立や親の介護といった生活環境の変化も多い時期であるために、心理的な問題も大きく影響して症状が重くなったり、うつなどの精神症状を引き起こすこともあります。
閉経と自律神経失調症
思春期以降、周期的に月経を起こす女性の生理機能にはエストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンが関与していて、その分泌は脳でコントロールされています。脳の視床下部から分泌されるゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)放出ホルモンが下垂体からのゴナドトロピン分泌を促し、さらにゴナドトロピンが卵巣を刺激して女性ホルモンの分泌を促すという仕組みになっています。ただし、この仕組みには独自の調節機能が備わっていて、女性ホルモンの分泌が十分になれば、その情報が脳に伝わりゴナドトロピンなどの分泌がストップします。逆に女性ホルモンの分泌が減少すればこれを増やそうと脳ではゴナドトロピンなどを分泌し続けます。ところが閉経を迎えると、ゴナドトロピンの刺激を受けても卵巣機能が低下しているため女性ホルモンは十分に分泌されません。そのため、視床下部や下垂体はホルモンの分泌を増やそうとしてさらに働き続けてオーバーワーク状態になります。これが原因で同じく視床下部によって支配されている自律神経系のバランスにも悪影響を及ぼすことになります。つまり、卵巣機能の低下による更年期障害は自律神経失調症の症状と大部分がオーバーラップしているのです。
本来、自律神経系は交感神経と副交感神経という二つの神経がバランスを取りながら心拍数や血圧、さらには体温調節や腸の動きに至るまでありとあらゆる機能を調整しています。例えば、ヒトが寒さを感じたときに末梢の血管を収縮させて体内の熱の発散を抑えようとするのは交感神経の働きであり、逆に暑いときに末梢の血管を拡張させて皮膚からの放熱を促そうとするのは副交感神経の働きです。また、運動したときに汗をかいて皮膚を濡らし、その気化熱で皮膚温を下げようとするのは交感神経の働きによるものです。このような自律神経系の働きによってヒトは体温を一定に保つことができるのです。ところが、自律神経系のバランスが乱れると、暑くもないのに末梢血管が拡張して顔がほてる、のぼせる、逆に末梢血管が収縮して手足が冷えるといった症状が現れることがあります。また、突然汗をかく、何もしていないのに動悸(どうき)やめまいがする、などの症状もよく見られます。特に、夜中寝ているときに急にどうきがして気になり眠れなくなってしまうのはとても不快なものです。
以前は、更年期は女性だけのものと考えられていましたが、最近では男性の更年期も注目を浴びています。更年期の症状は個人差が大きいため他人にはわかりづらいこともあって、理解されにくい病気です。