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夏の薬草木
墨を流したような模様
1番の写真、何だと思いますか。綺麗な模様ですね。墨絵のような、または友禅流しのようにも見えます。じつはこれ、トウゴマの種子の模様なのです。(写真2)
種子の大きさはタテ1cm前後、ヨコ0.6〜0.8cmの卵状の楕円形、表面は艶があり、灰色に紫褐色の斑紋があります。一粒一粒皆違う綺麗な模様をしています。(写真3)今はやりのブレスレットに加工したら、なにか幸運に恵まれるかも知れませんね。この斑紋をゴマを散らしたようだと見て、漢名は中国のゴマ「唐胡麻(とうごま)」と呼ぶようになったようです。
西洋では美意識の違いでしょうか、あまり良いイメージではないらしく、ラテン語の学名には「シラミのような形の種子」をしていると言う言葉が付けられています。
原産地はインドで、我が国には、中国経由で渡来し各地で栽培されるようになりました。インドのような温かい土地では宿根・多年草で、我が国では毎年、種子を蒔く一年草と言われています。しかし当園では、このところの温暖化の影響でしょうか、多年草のように越冬し、翌年も成長しています。花も早めに開花するようになりました。
雌雄同株で上の方に雄花、その下の方に雌花を咲かせます。茎と葉の部分が綺麗な赤い色の品種もあり、生け花の花材としても多く利用されるようになりました。(写真4)
乾燥した種子を生薬名「蓖麻子(ひまし)」、搾った脂肪油は「ヒマシ油」と呼ばれ、医薬品の規格書「日本薬局方」に収載されています。ヒマシ油はご年配の方はご存じと思いますが、かつては下剤として利用されておりました。しかし、作用が強く現在は他により安全で有用な薬が開発されたため、あまり活用されなくなりました。
写真1/写真2
写真3
写真4
エビスグサ(マメ科)
夷(異国)から渡来したと言うことから、エビスグサ(夷草)と名付けられました。アメリカ原産の1年草で、熱帯アジアから中国南部を通じ、今から約270年ほど前の亨保年間に渡ってきたと言われています。中国では便通を良くし、視力の衰えを防ぐと言われたことから「明(目)を決(ひらく)種子」ということでケツメイシ(決明子)と呼びました。8〜9月にかけて黄色い可愛らしい花を咲かせます。お通じの良くなる民間薬として、昔からハブソウの種子を用いた「ハブ茶」が服用されてきましたが、今「ハブ茶」と言えば、このエビスグサの種子、生薬名「決明子」(ケツメイシ)が用いられます。それは、含有成分が似通っていて、収穫・収量が多く、さらに外見上、艶がありきれいなことから、ハブソウに取って代わったようです。健康の秘訣の一つは便秘しないこと、薬局・薬店で日本薬局方「決明子」を購入し、ぜひご利用下さい。
ハトムギ(イネ科)
鳩が好んで食べるところから名が付けられたことは、あまりにも有名です。実際に春種子を蒔くとき、鳩が見ていないか、良く確認しないと、蒔いた後、みなほじくり返されるほどです。我が国には、エビスグサと同じ頃、亨保年間に中国あたりから渡ってきたと言われています。古くから栽培されていましたので、各地でシコクムギ(四国麦) 、チョウセンムギ(朝鮮麦)、トウムギ(唐麦)等と呼ばれていました。ジュズダマによく似ていますが、高さ1〜1.5m位になる、一年草です。花は8〜9月、イネに似た小さな花を咲かせます。ちなみにジュズダマは、毎年越年し春に芽を出す宿根草で、その種子は薬用に利用されることはありません。民間薬としては、乾燥した種子を「ハトムギ」と呼び、お通じを良くしたり、お肌をきれいにしたり、いぼ取りなどに利用されます。漢方などには外の皮を取り去ったものを、生薬名「薏苡仁」(ヨクイニン)と呼び、手足の痛みや、関節の腫れなどを取る「薏苡仁湯」(ヨクイニントウ)や、「麻杏薏甘湯」(マキョウヨクカントウ)などに配合されます。薏苡仁は病後や体力のない人がお粥として食すると大変効果があります。
ドクダミ(ドクダミ科)三種
ドクダミは我が国何処にでも見かける植物です。6月頃に咲く四弁の白い花は清楚で、野草の中でも飛び抜けています。ただ、そのままでは臭いませんが、折ったり揉んだりすると異臭を放つため嫌われがちで、少し気の毒なような気がします。この白い花弁と見える4枚のものは、実は花弁ではなく葉が変化し、花を保護するための総苞です。花はと言えば、その上の穂に花弁のない「雌しべ1本」と「雄しべ3本」だけの黄色い小さな花が沢山ついています。
一度じっくり観察してみてください。沢山花が咲いても種子はあまりできません。繁殖はもっぱら根茎だからでしょうか。
さて今回は写真のような変わりものをご紹介します。「八重咲きドクダミ」と「五色ドクダミ」です。八重咲きは真っ白な苞が幾重にも重なり、あたかも八重の花びらのように美しく咲きます。そして、小さな雌しべと雄しべだけの小さな黄色の花は少し苞の間に見られる程度です。
片や五色の方は花と見えるところは、少し小振りで寂しく感じられますが、葉が美しく五色に変化し、花が無いときでも楽しむことができます。両種とも特に交配したとか、作り出したものではなく、自然界から選別さたようです。薬草として利用する時は「八重咲き」、「五色」共に普通の種と同じように利用できます。
ドクダミ群生
八重ドクダミ
五色ドクダミ
ドクダミの名前の由来は昔、化膿(かのう)した「おでき」に貼り、膿(うみ)を吸い出すのに利用されたところから、毒を矯(た)めて出す、ドクダメ、ドクダミと変化したものと言われています。薬として用いる場合には、薬の規格書「日本薬局方」に生薬名「十薬」(じゅうやく)として掲載されています。大変多くの薬効が研究され証明されています。
学名のcordata(コールデータ)は心臓の形をしたハート型の葉を意味します。弊社の強心剤「救心」にドクダミは配合されていませんが、心臓・ハートと言うことで、なんとなく親しみを感じます。
花の咲いている時期が成分的に一番充実していると言われ、この時期に採集し、日干しにすると、独特の臭みはほとんど気にならなくなります。 生薬・漢方の大家伊沢凡人先生は、健康の秘訣は便、尿や汗を出すこととおっしゃっています。昔から、お通じやお小水の出を良くする民間薬として活用さてれきた薬草「ドクダミ」を、美容と健康維持に、健康茶等で積極的に活用されては如何でしょう。
ハナスゲ(ユリ科)
葉がスゲに似ていて、花が美しいところから「ハナスゲ」と名付けられました。中国原産のユリ科の多年草です。葉の高さは30〜70cm位で、花の茎は50〜100cm位までのび、葉の間にすっくと立ち上がって、なかなか良い姿をしています。上部30cm位のところに、小さな筒状の淡紫色の花を沢山咲かせます。 薬用には、根茎部分を用い、薬の規格書「日本薬局方」に生薬名「知母(ちも)」で掲載されています。民間療法ではあまり使われませんが、漢方では内熱をとり、痛みを止め、腫れを去ると言われ、よく使われます。代表的な漢方処方では「白虎湯」「白虎加人参湯」「桂枝芍薬知母湯」等に配合されます。