本誌44号「フラットフッティング」の項でも述べているが、「山では、『歩幅を小さくゆっくり歩く』のが基本である。歩幅を小さくゆっくり足を運ぶと、疲労は少なくて済む。
歩く=前に進むということは、後ろ足から前足へと体重を移動してゆくことにほかならない。街中では道が平らだから、なんの疑問も頭によぎることなく、歩いていける。しかし道が登坂になり急坂になると、一歩足を前に出したはいいものの、体重は後足に残ったままで、前足に移動してはくれない。歩行はストップしてしまう。
この時、体重を前足に移動させるには、ヨイシャと身体を振り込んでやらなければならない。これを何回も繰り返したら、たちまち体力は消耗する。歩幅が広いとその分、そこに用意される段差は大きくなるから、体重を移動させるために消耗する体力も大きくなる。日常の歩行ではまったく意識していなかった歩幅に、意識を働かせざるを得なくなる。一歩踏み出してできる段差を小さくし、体力の消耗を防ぐには、歩幅を小さくするしかない。
無造作に足(靴)を出すと、個人差はあるが、前足のカカトと後足のつま先の間は、靴一足分くらいの開きが出る。このひらきが段差をつくり、体力消耗の要因となるので、無造作に足を出さないこと、意識した足運びを忘れてはいけないことを知る。前に出した靴のカカトは、後足の靴のつま先に重なるくらいの位置に踏み下ろしてやるといい。歩幅が小さくなればなるほど、次なる課題の段差は小さくなるので、体重はスムースに移動するという寸法だ。
足(靴)を前に出したとき、体重が後足に残らず、スムースに前足に移動する、それくらいの歩幅で足を運ぶことが、山でバテないポイントである。