いきいきライフプラン

「金利が上がったら…」今、やっておくことは?

荻原 博子氏
荻原 博子(おぎわら ひろこ)
経済ジャーナリスト

難しい経済と複雑なお金の仕組みをわかりやすく解説。時代の一歩先を行く分析力に定評あり。「マイナ保険証の罠」(文藝春秋)「年金だけで十分暮らせます」(PHP研究所)「5キロ痩せたら100万円」(PHP研究所)「一生お金に困らない お金ベスト100」(ダイヤモンド社)「私たちはなぜこんなに貧しくなったのか」(文藝春秋)など著書多数。

日銀がマイナス金利を解除し、この先は徐々に金利が上昇するかもしれません。
金利上昇に備えて、私たちは何をしておけばいいのでしょうか?

●住宅ローンは、繰り上げ返済を。

住宅ローンなどの借金がある人は、金利が上がらないうちに早めに「繰り上げ返済」をして、借入元金を減らしておきましょう。

特に、変動金利で借りている人は、半年ごとに金利の見直しがありますが、5年間は返済額が変わらないために、支払い不足の金利が未払い利息として元金に組み込まれ、極端な場合には、しっかり返済しているのに元金が増えていくというようなことにもなりかねません。

固定金利で借りている人でも、年金が支給される前までには返済が終わるようにしておきましょう。年金生活の中でローンまで返済しなくてはならないと大変だからです。

●預金金利は、中小金融機関が有利!?

「マイナス金利の解除」で、銀行では普通預金の0.001%が0.02%程度に上がる銀行が増えました。ただ、この先もどんどん金利が上がるのは難しい。

今回、金利が上がったのは、マイナス金利の解除で銀行は皆さんから預かったお金を、安心して日銀の中にある銀行がお金を預ける当座預金口座に0.1%の金利で預けられるようになったから。皆さんから0.02%で預かったお金を、日銀の口座に0.1%で預ければ差し引き0.08%が確実に儲かることになります。

もし、今以上に金利が上がるとしたら、社員の給料やボーナス、設備投資などで実際の資金需要がある中小金融機関が上げる可能性が高い。特に、年金受け取り口座や各種振込口座として利用する人には高い金利をつけるというところは多いようです。

ただし、投資に誘い込むために高い金利を出しているというところもあるので要注意。預金で稼ぐ金利より、投資で失ってしまうお金のほうが大きいということになりかねないので!

●投資は、それほどお勧めできない。

投資については、それほど良い環境とは思えません。なぜなら、金利の上昇は、投資にとっては不利な条件になるからです。

金利の上昇は国内景気を冷やすだけでなく、海外との金利差が小さくなるので、為替が円高に振れやすくなります。現在、日本では、海外の投資商品を買っている人が多いので円高になると損をする人が多い。それだけでなく、今まで円安だったので日本の株式市場に参入してきた外国人投資家が逃げていくということになりかねません。

ただ今回は、「マイナス金利解除」「金利のある正常な状況」とマスコミなどが大騒ぎした割には、マイナス0.1%の金利が0%になっただけの小幅な変化だったので、海外からは「日本は今のまま金融緩和をやめない」と見られていて、そのため円が売られて円安になっています。それで、なんとか株価も*4万円前後にとどまっている状況なので無理な投資はやめましょう。

●経済環境は、けっしてよくない。

日本の経済は、良いとは言えません。

経済のバロメーターのGDP(国内総生産)はかろうじて2期連続のマイナス(不況の基準となる)を避けましたが、GDPの半分以上を支える個人消費は3期連続のマイナス。実質賃金も、22ヶ月連続マイナスで、しかも人手不足が原因の賃金上昇なので、新入社員の給料は上がっても、50代の給料は役職定年などで逆に下がるケースも少なくない。

しかも、「子ども・子育て支援金」のような実質増税と言われる政策が目白押し。

今の日本経済は、ピラミッドに例えると、上の2割は晴天ですが、下の8割は土砂降りの雨状態。大多数の人は下で暮らしているので、景気が良くなっている実感はないでしょう。

だとしたら、「借金減らしてしっかり貯金」の原則は、まだ当分の間変わりません。

*2024年4月現在