岩崎元郎の山歩きのススメ

北八ヶ岳・坪庭

岩崎 元郎氏
岩崎 元郎(いわさき もとお)
日本登山インストラクターズ協会理事長

1945年、東京生まれ。無名山塾主宰、日本登山インストラクターズ協会理事長。中高年登山ブームの仕掛け人。81年春、ネパールヒマラヤ・ニルギリ南峰登山隊に隊長として参加。帰国後11月、無名山塾を設立。NHK教育テレビ番組『中高年のための登山学』で講師を務める。著書に『山登りの作法』(ソフトバンククリエイティブ)、『ぼくの新日本百名山』(朝日新聞出版)、『登山不適格者』(NHK出版)ほか。

冬がくる。雪が降る。雪が積もると雪崩があったりして危険と決めつけて、登山をやめてしまう人が少なくない。冬山は夏山に比し危険は大きい。雪崩ばかりでなく、寒気そのものが大いなる危険だ。夏なら捻挫して行動不能になり、その場で一晩明かすことになってもどうっていうことないが、冬だと低体温症で凍死しかねない。

真っ白に雪化粧された山々は美しい。危険が大きいからと登山をやめてしまうのはもったいない話だ。安全度の高い山域を見つければ、そこで雪山を楽しめるはず。お勧めは北八ヶ岳。八ヶ岳の北側に広がる山域だ。八ヶ岳がアルペン的な山容の岩山であるのに対し、北八ヶ岳は静かな森の山で、森の中に点在する池が北八ヶ岳の魅力をさらに増幅している。登り易いから初心者には格好の登山対象になるし、ファミリーや※逍遥(しょうよう)派の登山者にも人気が高い。森の山だから雪崩の心配がない。とっておきのお勧めコースが坪庭。ロープウェイがあるからいつでも逃げられる。服装と装備をきちんと雪山用にすれば、初心者でも安心して踏み込むことのできる雪山だ。

寒さを感じさせないウールの下着、行動着、アウターは厚手のフリースのジャケットを用意する。北八ヶ岳ならピッケルは不要、ストックと六本爪の軽アイゼンがあればいい。靴はハイカットでハードなもの、アッパーがフニャフニャだとアイゼンバンドを締め上げたとき足の甲が圧迫されて痛い。靴に雪が入らないようスパッツは必携。サングラスを忘れずに。

中央本線茅野駅下車、駅前からロープウェイ山麓駅までバス。ロープウェイに乗れば、数分で標高2233mの山頂駅まで運び上げてくれる。山頂駅、そこが坪庭の入り口だ。駅舎を出て、雪の上でアイゼンは着用する。道標に従って、雪の上に踏まれている道(トレース)を辿る。前後左右真っ白、都会では絶対に出会えない光景、一周約1時間の冒険だ。トレースがなかったり、悪天で視界がなかったりしたら計画は中止すればいい。

※逍遥:そぞろ歩き・散歩

2018 vol.32