岩崎元郎の山歩きのススメ

フラットフッティング

岩崎 元郎氏
岩崎 元郎(いわさき もとお)
日本登山インストラクターズ協会理事長

1945年、東京生まれ。無名山塾顧問、日本登山インストラクターズ協会理事長。中高年登山ブームの仕掛け人。81年春、ネパールヒマラヤ・ニルギリ南峰登山隊に隊長として参加。帰国後11月、無名山塾を設立。NHK教育テレビ番組『中高年のための登山学』で講師を務める。著書に『山登りの作法』(ソフトバンククリエイティブ)、『ぼくの新日本百名山』(朝日新聞出版)、『登山不適格者』(NHK出版)ほか。

がんじがらめだったコロナも五類に移行し、行動の自由がきくようになった。これを機に、山登りでも始めてみようかと思いたった方もいらっしゃるようだ。岩登りや沢登り、雪山登山ならいざ知らず、一般コースから頂をめざす山登りなら、街中を歩くのと同様、足を交互に上げていけば自ずと頂上は足下にくる。と、だれもがそんな風に考えるだろう。が、そうは問屋がおろさない。山の歩き方は、街の歩き方とは全然異なるのだ。山でバテない足の運び方をアドバイスしよう。

登坂で不用意に足を前に出すと、ツマ先から地面に着いてしまう。後足から前足に体重を移動すべく、ツマ先に体重をかけると、ツルンと前のめりに滑りかねない。下り坂で不用意に足を前に出すと、カカトから着地。そのカカトに体重を預けようとすると、ズルっと滑って尻もちをつきかねない。街中と異なって整備されていない山の中の道では、点で着地するのではなく、足(靴)裏全体という面で着地するように足運びすることが大切だ。足裏全体がベタっと地面を捉えることを、フラットフッティングという。

登坂では、ツマ先から地面に接し易いので、逆にカカトから地面を捉えるように足を踏み下すと、フラットフッティングする。下り坂では、ツマ先から踏み下ろすように足を運べば、靴底全体がベタっと地面に着地する。ツマ先やカカトという点で地面と接するのではなく、靴底がフラットフッティングしていれば、不安なくその足に体重を移動できる。登りではカカトから、下りではツマ先から着地するように、足運びには神経を充分つかいたい。

山では、「歩幅を小さくゆっくり歩く」のが基本だが、歩幅を小さくゆっくり歩くポイントがフラットフッティングなのである。