はあとふる対談

「自然に、そしてあるがままに」ゲスト:眞野 あずさ(女優)

聞き手:堀 正典救心製薬株式会社代表取締役社長 慶應義塾大学卒
趣味は謡曲、書道、墨絵、車、ゴルフ、ネイチャーフォトなど

眞野 あずさ(まの あずさ)さん
眞野 あずさ(まの あずさ)さん
女優

東京都渋谷区生まれ。大学在学中よりCMモデルを務め、卒業後の1982年にTBS「風の鳴る国境」で、ヒロインとして女優デビュー。人気シリーズドラマ、テレビ朝日「検事・朝日奈耀子」、TBS「上条麗子の事件推理」をはじめ、多くのドラマ、映画、舞台で活躍。姉は女優の真野響子さん。

気づけば女優の道に
本日は女優の眞野あずささんにお話を伺います。週刊誌の表紙を飾ったのが芸能界入りのきっかけとお聞きしてますが?
眞野
父が家長制度を引きずっていた人で、女性は短大を卒業して結婚をすればいい、勉強は必要ないという考え方でした。友達の殆どが4年制に進学する中、私も4年制大学に入学したのですが、「2年間の学費は出すが、後は自分で稼ぎなさい」と言われました。デパートの売り子や家庭教師、選挙の手伝い、そしてモデルの仕事も始めました。4年生の時に5歳年上の姉(真野響子)が、その女子大生シリーズを撮っていたカメラマンに「妹にも出てもらえないか」と頼まれて実現した話です。その時は芸能界に入るつもりはありませんでした。
聖心女子大学のご出身でしたね?
眞野
はい、大学は私立でしたが、それまでは公立の学校に通っていました。特に高校のクラスの男子の数は女子の2倍でしたので、大学のイメージとはかけ離れて乱暴に育っております(笑)。卒業後はコマーシャルモデルの年間契約が残っていた為、就職活動も出来なくて…その後の進路に悩んでいました。半年間のテレビ局での秘書のアルバイトが終わる頃に他局の新しい情報提供番組の司会をして欲しいと依頼され、それが芸能界入りのきっかけとなりました。
それを機に芸能界のお仕事を続けていこうと思ったのですか?
眞野
いいえ、私は話す事も自己表現も苦手でしたし、司会のお話も最初はお断り致しました。それでも「君しか考えていない」との強いお誘いを受けてお引き受けしたんですが、暫くして「真野響子の妹という話題性だけで採用したんだ」と言われてしまったんです。確かに未熟な自分でしたね。姉とライバル視される女優の選択肢は避けていたんですが、その時のスタッフを見返したいという思いから女優の道を選ぶ事になりました。運良く、2時間ドラマの新人主役を探していたプロデューサーを紹介頂けて、3分で出演が決まりました。
それが「風の鳴る国境」ですね。
眞野
はい、1ヵ月間のオールフランスロケで、恋人役のポーランドの俳優はフランス語。大学では第二外国語でフランス語を学びましたが、相手の台詞の語尾を覚えて自分の日本語の台詞を言うのが精一杯でした。編集で恋人役のフランス語は日本語に吹き替えになり、私も共演シーンでは画面の自分の口の動きに合わせて台詞を入れ直すことになり、初めての仕事としては大変でした。
その後、ドラマを中心にご活躍されますが、中でも藤田まことさん主演の人気ドラマ「はぐれ刑事純情派」ほか、シリーズ物の印象が深いですね。1つの作品に長く携わることの良い点は?
眞野
「はぐれ刑事」のさくらのママを21年間、2時間ドラマの「弁護士・高林鮎子」を19年間、「検事・朝日奈耀子」を14年間演らせて頂けました。長期間のドラマは役に入りやすいですし、又、役に育てられます。弁護士や検事の役がなければ今の性格にはなっていなかったと思います。ただ、自分より遙かに賢い役が多かったので、知性の出るクイズ番組などには出ないようにしていました。
2014年には「マトリの女」でお姉さんと初共演もされましたね。
眞野
はい、以前より姉から歳を取ったらやりたい姉妹の舞台があるからと言われていました。脚本はオリジナルになりましたが、そのコメディーの舞台の宣伝も兼ねた形でのドラマ共演になりました。「マトリの女」でも姉妹役。誰よりも演り易く、楽しい共演者です。
普通であること
女優を続けるにあたって、大切にしてきたものはありますか?
眞野
これまでに職業欄に女優と書けたことがなくて…女優と言える域には未だに達せていません。荷が重すぎて何度か辞めようと思いました。でも、シリーズの仕事もありましたし、共演者、スタッフにも恵まれ、支えられながら運よく続けて来られました。女優業は大勢の皆様に知られるという特殊性はあっても、他の仕事と変わりないと思っています。自分には女優としての才能はありませんが、その分普通の生活や感覚を大事にするよう心がけて来ました。視聴者の方々から共感を得られる人間を演じるには「普通」が必要な場合が多いですから、「こういう人っているじゃない」と思って頂ければ嬉しいです。
普通を演じるとは逆に難しいものなのですね。
自然のエネルギーを感じる
食事や運動など、普段から健康管理に気をつけていることは?
眞野
野菜を多く摂るように、できれば新鮮な有機野菜をと心掛けています。スポーツをするのが好きでしたが、膝を痛めてからは無理のない程度に歩き、ストレッチや自宅のマシンで必要な筋肉のトレーニングをしています。先日の屋久島旅行の際、縄文杉を見るには10時間近く歩かなければならず、諦めて2時間程のコースを選んで散策しました。過酷な環境下ゆえに成長が遅く、樹齢が1000年以上の大木が立つ幽玄な森からエネルギーを貰えました。
東洋医学に「気・血・水」という考え方がありますが、大きくて古い樹木などからは特に自然の「気」のエネルギーを感じますよね。
眞野
枯れ木と見紛う様な老木は苔の衣に覆われていて、美しい花や紅葉を楽しましてくれる木々が着生し、共存している姿も見事でした。林芙美子さんの小説で「月のうち35日は雨」と表現される気候の中、栄養の少ない花崗岩の上に育つ屋久杉です。自然の清澄が心地好く、都会では呼吸の浅い私が、いつの間にか深呼吸出来ていました。人間には自然に癒やされる時間が必要なんですね。屋久島から帰ったらみんなに優しくできました。
生薬でできた救心にも自然のエネルギーが詰まっていて、気血の巡りを良くする働きがありますのでお試しください。
読書から得たもの
趣味やお仕事以外に夢中になれることはありますか?
眞野
趣味というのは特にないんです。何にでも興味があって、学ぶ事が好きです。今まで税理士に任せていた確定申告を2年前より自分でしています。その為に通信で簿記の勉強を3ヵ月しました。その前は、やはり通信で英語と数学を2年間学び直しました。読書も好きです。
どんなジャンルの本がお好きですか?
眞野
昔から推理小説が特に好きでした。小学生でルパン、ホームズを読破しました。松本清張、横溝正史、アガサ・クリスティなど著名な作家の小説も全て読みましたし、パトリシア・コーンウェルの検屍官シリーズも全巻読んでいます。2時間ドラマを作る時にとても役立ちました。
仕事や人生に於いて、座右の銘(好きな言葉)はありますか?
眞野
今は「則天去私(そくてんきょし)」という言葉でしょうか。
聞き慣れない言葉ですが。
眞野
夏目漱石が晩年に文学・人生の理想とした境地を表した言葉で、「小さな私にとらわれず、身を天地自然にゆだねて生きて行く」という意味で、あるがままと言いますか、私もこの言葉のような生き方を目指したいなと思っています。
読書好きな、奥ゆかしい眞野さんご自身を表したような言葉ですね。最後に今後の抱負などお聞かせください。
眞野
歳をとると、出来なくなる事や捨てる事が増えていきますね。捨てるばかりではなく、拾う事もしていきたいと思います。最近は助けが必要な親しい人の為に費やす時間が多く、いずれ余裕が出来た時に何を拾って楽しもうかと、現在模索中です。
本日はありがとうございました。
SOMBREUIL ソンブルイユ

[取材協力] 東京都千代田区富士見1-8-12 TEL:03-5212-4121

2019 vol.34