いきいきライフプラン:少額な財産でも「相続」になるかも!

荻原 博子氏
荻原 博子(おぎわら ひろこ)
経済ジャーナリスト

難しい経済と複雑なお金の仕組みをわかりやすく解説。時代の一歩先を行く分析力に定評あり。「荻原博子の金持ち老後 貧乏老後」(毎日新聞社)「今年が買いどき!トクをするマイホームと住宅ローン 2015/2016年版」(主婦と生活社)「10年後破綻する人、幸福な人」(新潮社)「隠れ貧困 中流以上でも破綻する危ない家計」(朝日新聞出版)など著書多数。

「子どもに相続させるほどの財産はないけれど、自分の葬式費用まで子どもに面倒を見てはもらえないので、それくらいは貯金しておこう」

ある程度の年になると、そう考える人は少なくないことと思います。

そういう人が、まず知っておかなくてはいけないのが、銀行預金は、契約者が死亡した時点で「凍結」され、相続の手続きが終わるまでお金の出し入れができなくなるということです。そうなると、葬式代も引き出せず、残された人たちに迷惑をかけるかもしれません。

そうならないためには、手元に現金を置いておくといいですが、これには防犯上危ない面もあります。だとすれば、「遺言代用信託」を利用するというのも手でしょう。

相続がすむまで、遺産は凍結される。

遺言代用信託とは、契約者があらかじめ払い出しの時期や金額、受取人を決めて信託銀行などにお金を預け、時期が来たら銀行が契約どおりにお金を払い出す仕組み。

2011年にはわずか67件だった契約が2012年には急激に増え、昨年末には累積契約数が13万件を超えました。

遺言代用信託の特徴は、大きく3つ。

1つ目は、葬式費用にあてることができること。契約者が、あらかじめ自分の死後、たとえば300万円を一時金で喪主となる子どもにあげる契約をしておくと、受取人は、死亡診断書や身分証明などを提示して手続きするだけで、一時金は受取人の口座に振り込まれます。仮に相続で預貯金が「凍結」されていても、これで葬式代をまかなえます。

2つ目は、相続のもめ事を防ぐ遺言書代わりにできます。

「うちは、それほどたくさんの財産はないから、子どもたちが相続争いなどすることはないだろう」と思ったら、大間違い。

相続争いというのは、少しのお金を巡ってでも起きるものなのです。

ちなみに、遺産分割でもめて家庭裁判所が調停や審判を受理する件数は、年間約1万5000件と言われていますが、このうち約3分の1は、相続税もかからない1000万円以下の財産でもめているのです。ちなみに、5000万円以下まで範囲を広げると、なんと4分の3がもめています(2014年司法統計)。

つまり、普通の家庭でも、相続争いは充分に起きる可能性があるということです。

ただ、普通の家庭で1000万円くらいの財産で遺言書をつくるというのも少し抵抗があるでしょう。ですから、こういう場合には信託銀行に相談して、遺言代用信託などで遺産の分配方法を決めておけばいいでしょう。しっかり者の子どもには一時金で渡し、浪費家の子どもには毎月定額で渡す年金タイプの渡し方もできます。

自分の持っている財産を、チェック!

3つ目は、預けても管理手数料が無料で、元本が保証されるところが多いことです。

遺言代用信託は、預け入れ金額が200万円から3000万円という銀行が一般的。銀行はまとまったお金を預かり、これを運用することで利益の一部を手数料として受け取ります。ですから、特別に手数料を支払う必要がないところが多いのです。

ただ、利用する場合には、注意しなくてはならないこともあります。

相続では、遺言書を書けば好きな人に全財産を譲ることができると思われがちですが、それでは他に生活に困る人が出てくる可能性があります。そこで、遺留分(いりゅうぶん)という制度が設けられていて、財産の一定割合までは請求すればもらえることになっています。

もうひとつは、遺言代用信託の対象が、現金・預金に限られていること。不動産などが高価だという場合には、別の対策が必要となります。

まずは、自分がどんな財産を持っているのかを書き出してみるといいでしょう。知らないところに通帳が眠っていたり、忘れていた保険があったなどということもあります。そのうえで、こうした財産で、どうすれば自分が旅立った後に残された人たちが幸せに暮らす役に立つのかを、しっかり考えてみるといいでしょう。

2017 vol.30