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春の薬草木

コラム 葉ート物語

今年の春、昭和薬科大学薬用植物園からいただいた「ツルドクダミ」が活着し、新しい葉が見られるようになりました。よく見ると大変綺麗に整った、“ハート型”をしています。弊社の生薬製剤「救心」は心臓に直接働きかけるお薬であることから、心臓=ハートをシンボルマークなどに使用しております。

ツルドクダミ
ドクダミ

ご承知のように「ツルドクダミ」はタデ科で、葉がつる性でドクダミに似ていることから名付けられましたがドクダミのような悪臭はしません。その根の塊を乾燥したものを生薬名「何首烏(カシュウ)」と言います。

カシュウは心臓に作用するものではありませんが、昔から強精、強壮、健胃薬さらにはお通じの薬として用いられてきました。また、髪を黒くし白髪を防止すると言われたことから、養毛剤などにも配合されています。

我が国には八代将軍吉宗公の時代に中国から渡来し、小石川療養所の薬草園などで栽培されていたと言われています。幕府では不老長寿の薬として大変大事に栽培利用したようです。つる性で繁殖力が旺盛なのも、理由の一つであったかも知れません。今、JRお茶の水駅や千駄ヶ谷駅のお堀の脇に、この植物を見かけることがあります。それは小石川療養所で栽培されていたものが逃げ出し、野生化したものではないかと言われています。最近では繁殖力旺盛なことから、比較的何処でも見ることが出来る植物です。

ヤマイモ
ユウガオ
サルトリイバラ

そのほかにも、“ハ—ト型”の葉を持つ植物を探してみたところ、おなじみのドクダミの他にもいくつか見ることが出来ました。同じつる性の植物で、野菜としても美味しい「ヤマイモ」、その根茎を生薬名「山薬(サンヤク)」と言い漢方薬にも配合されます。

夕方から白い花を咲かせるウリ科の「ユウガオ」の幼い葉も綺麗な“ハート型”です。大きく成長した果実を薄くリボン状に剥いたものがかんぴょうです。 山に自生する「サルトリイバラ」、その根茎を、生薬名「山帰来(サンキライ)」と言います。最近よく見かけるようになりました「洋種のアサガオ」の葉や名前が気の毒なような「ヘクソカズラ」などの葉も“ハート型”でした。「スミレ」にも見ることが出来ます。

植物の葉には他にも、腎臓の形をしたもの、綺麗な円形、卵のような形やマツ葉のように針のような形のものなど千差万別です。この他にも小さい葉っぱが集まって一つの葉を構成している複葉、ノコギリの歯のように切れ込みのあるものや毛が密生しているものなどがあります。朝夕の散歩の時など、花を眺めるのも楽しいことですが、葉の観察もして見ませんか。きっと造形美のすばらしさに出会うことが出来ると思います。

イカリソウ(メギ科)

春たけなわ、野山の散策には最適な季節です。新緑が眩しい林間や丘陵地ではいろいろな草花に出会います。中でも一際特異な形の花を咲かせるイカリソウはその造形美に驚嘆させられます。

イカリソウは周知のとおり、その花の形が船舶の「いかり」に似ていることから付けられました。漢字に当てますと「錨草」「碇草」になります。 このイカリソウは昔から強壮、強精作用があると言われてきた植物です。しかし、中国で古来から医薬品として用いられてきた生薬名「淫羊藿」(いんようかく)は同じメギ科の多年草ですが、花の形がイカリ型ではないホザキノイカリソウです。この植物は江戸時代天保年間に中国から渡来しましたが、我が国では薬用としては栽培されなかったようです。

イカリソウ

イカリソウ

中国では李時珍の著と言われる薬草を解説した「本草綱目」と言う書物の中で、淫羊藿の記述に「人は之を服すれば好んで陰陽をなすものである。西川(四川)の北部に淫羊(羊)と言う動物があって一日に100回交合する。それはこの藿(ホザキノイカリソウ)を食うためだということだ。ゆえに淫羊藿と名付けたのである。」と強精剤との記載があります。

我が国では各地で自生している淡紅紫色4弁の花を数個付けるイカリソウ、北陸地方から山陰地方にかけて自生している冬でも葉が枯れないトキワイカリソウなどが民間療法として、強精、強壮や健忘症などに用いられてきました。

ホザキノイカリソウ/ホザキノイカリソウの花

ホザキノイカリソウ/ホザキノイカリソウの花

煎じて服用したりしますが、一般的に利用しやすいのは、薬味酒ではないでしょうか。強精、強壮、低血圧症、食欲不振などの方は、杯一杯程度。不眠症の人は就寝前に服用すると良いと言われています。これを「イカリソウ酒」、「仙霊脾酒」(せんれいひしゅ)といいます。

茎葉には精液分泌を促進させ、間接的に性欲を亢進させる、男性ホルモン様作用が見られるとも言われます。

我が国にはいろいろな別名が残っているようです。中でもヨメトリグサ、イカリグサ、マラタケリグサなどがあり、その効用が忍ばれます。また、葉のつき方にも特徴があり、一本の茎から枝が三枝に分かれてそれぞれに三枚の葉をつけ、全部で九葉になることから別名「三枝九葉草(さんしくようそう)」とも呼ばれます。花だけでなく、特異な特徴を持つ葉も観察していただきたいと思います。比較的珍しい中国原産のホザキノイカリソウ、各地で自生しているイカリソウやトキワイカリソウの写真をご覧下さい。

トキワイカリソウ

トキワイカリソウ